不動産広告を参考にしてはいけない理由
不動産屋に売却するマンションの査定を依頼する前に、「相場」を知る方法として折込チラシやインターネット上のデータを活用するやり方をご紹介しました。(参照:本当はわからないマンション売却価格の『相場』)
この不動産広告、確かに一つの指標とするのは構わないのですが、一点だけ気をつけなければならないことがあります。それは、「長期間売りに出ている広告」「よく目に留まる広告」は、市場からは相手にされていない物件であるという事実です。
素人ではわかりませんが、これは不動産業界では当たり前の「常識」とも言えること。食品や化粧品など、売れている商品に集中的に宣伝費を投入して広告を打つという戦略からすると、何とも理解しがたい事実かもしれません。
しかし、不動産の場合は少し事情が変わってきます。良い物件、目ぼしい物件は、すぐに買い手がついて成約され、広告から姿を消していくのです。
一生に一度の買い物と言われる不動産を購入しようという人は真剣です。常に情報収集をし、その地域で最も良いと思われる物件が出たら、素早く反応します。不動産屋もそのような物件が出たら、即座に見込み客に連絡を入れるでしょう。つまり、優良物件は「広告」される間もなく、売買されてしまう可能性があるということです。これは、仲介業者である不動産屋を通じて売買が行われるシステムならではの特徴と言えるかもしれません。
つまり、厳しい言い方をすれば「広告掲載物件」というのは、ある意味「売れ残り物件」でもあるのです。なぜ売れ残っているのか、その理由はさまざまでしょう。ただ、物件の価値に対して売出価格の設定が高すぎるのは間違いありません。
ですから、長く掲載されている広告物件と比較して「売出価格」を決めたり、値下げを渋ったりするのは、賢明な判断とは言い難いのです。
仮に2800万円で売り出されている物件が売却されたとしても、実際の売却額が売出価格と同じだったとは限りません。もしかしたら、値段交渉の末に300万円割り引いた2500万円で売却が成立した可能性だってあるのです。
よその不動産屋が扱う物件の成約の詳細はわかりません。その点を踏まえて、売却価格には幅を持たせて考えるのが大切と言えるでしょう。